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■ヒトシンカ


 健全な市民常識:洋の東西を問わず、古来より処刑は民衆にとってショーであり、また祭りでもあった。石打ちなど刑の種類によっては人々自身が積極的に参加し、公開処刑の場は人で溢れ、熱狂した民衆がさかんに声援を送った。執行人が処刑に失敗などすれば、怒り狂った大衆のリンチに遭って執行人自身が惨殺されることさえ稀ではなかったのである。もっとも、楽しみのあとは刑吏を差別することによって自分が殺戮を忌避するかのように装うことは忘れなかったが。

 ところが近代になって、この熱狂に立ち塞がるものが現れた。人権保障の立場に立つ近代司法制度である。「推定無罪」「証拠主義」「被疑者の人権保障」……せっかくの流血の楽しみを邪魔された民衆は司法制度の担い手を憎悪を込めて罵る。いわく「法律家には一般常識がない」「加害者の人権が過剰に保護されている」といった文句である。犯罪者への厳罰という正当化された殺戮を求める心理を、彼ら自身は“健全な市民常識”と呼んでいる。

→[[常識]]
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