■ヒトシンカ

 スポーツやギャンブルなどの世界では、「成功が連続している時には次のチャレンジでも成功しやすい」という信念が広く信じられている。ギャンブルは論外として、スポーツにおいてこの信念を支持する内部理論は次のようなものである。2度・3度と成功(例えば得点)したスポーツ選手はリラックスし始め、自信もつくのでその後も成功しやすくなる。これが「波に乗る」である。反対に何回も連続して失敗した選手は「波に乗」れず、プレッシャーがかかったり慎重になり過ぎたりして、更にその後の失敗への悪循環に陥ってしまうという。
 T.ギロビッチら(1985)はバスケットボールにおけるシュート成功率を実験的統計的に分析し、この現象が実在しないことを証明した。「波に乗る(hot hand)」という現象が実在するなら、同じ選手では直前のシュートが成功している場合には、直前に失敗している場合よりも成功しやすい筈である。まず彼らは1980-81年のフィラデルフィア・セヴンティシックサーズのシュート記録を統計的に分析した。結果は「波に乗る」という傾向はなく、むしろやや逆であった(前回失敗した選手の方がやや成功率が高かった)。しかし、これだけでは現象が反証されたとは言えない。「波に乗」っている選手はより難しい場面でもシュートしようとし、また敵チームの警戒も強くなるので、表面的にはシュートの成功率があがらないだけかもしれない。そこで妨害が無く、常に同じ距離から2回ずつシュートすることができるフリースローに分析対象を限定したが、選手の2回目のシュートの平均成功率は、1回目の成否にかかわらず等しかった。さらにギロビッチは続ける。これでもまだ納得しない人々は「波に乗る」という現象の存在を頑固にも主張するために、現象の意味が正しく理解されていないからだと反論する。「波に乗る」という現象は、成功や失敗が連続するということではなく、ショットの成否が予期できるという現象を言うのだ、と。しかし、彼らは大学のバスケットチームの選手を集めて実験し、この反論さえも否定した。選手たちは、自分では「波に乗る」という信仰を支持し、ショットが外れた時には次のショットも外れると予想し、成功した時には次のショットも成功すると考えていたが、全く偶然のレヴェルでしか当たらなかったのである。


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Last-modified: 2010-08-24 (火) 18:41:21 (3007d)