■とつげき東北
模倣ではなく創造が大事と言われ始めたのはここ最近の出来事である。
歴史的に見て、模倣が創造性よりも「劣っている」などとみなされたことは、かつて一度もなかった。
創造性が重要であるとされはじめたのは、模倣の技術が充分に発達し、模倣することは簡単なことであると言えるほどの技術的基盤が完成した分野がときおり存在するからである。
ところが、「模倣なら簡単にできる」と言える分野は今でも決して多いわけではない。
絵画の分野において、写真よりも正確に風景を描き取れる画家はそうはいまい。
参考書の解法を模倣すればみなが東大にいけるはずだし、流行の曲を模倣すればヒット曲が作れる、と考えるのは明らかに誤りである。
「模倣」ということのうちにある技術的な困難さが、ある特権的な機会と恩寵とを得たときに、それが創造性と呼ばれる。
人間の創造性とは、まずは第一に、「優れたもの」の模倣に他ならない。
Last-modified: 2010-08-24 (火) 18:41:12 (2800d)