とつげき東北

 宮台真司によると、「自然」なるものが何か優れたもの、懐かしいものとして「発見」されたのは、人間歴史の中で比較的最近であるという。それまで「自然」は、単に粗野なもの、未発達のものとみなされていたわけである。今となっては普遍的な概念であるかに思われている「愛」が、実はヨーロッパの宮廷文化において初めて「発明」されたという事実を知ることと同様に、歴史的視点をもって物事を見たとき、特定の「時代的流行」を追うことに心血を注ぐ行為の、容赦ない無意味さが明るみに出ることがあるものだ。

 さて、工夫と技術を凝らして発展してきたはずの料理の世界において、掲題の語がもてはやされるのはどういうわけだろうか。牛を殺してきてそのまま生肉を食べれば明らかに不味いように、おいしいものを作るには、人の味覚にあった味付け・過熱・調理が必要不可欠である。
 ところが料理界では、マスコミ的な方向付けによって、激しい「ブランド化」が起きてしまっている。ほとんど同じ地域で作られた米が、県境をまたぐかどうかで「新潟産コシヒカリ」になるかどうかが決まり、それによって価格に圧倒的な差がついてしまう世界である。消費者は「新潟産コシヒカリ」を「やはりおいしい」と思い込んで食べるのだ。

 このような世界において、逆選択が起きるのは当然のことである。本当に技術を投入して工夫しておいしいものを作ろうとも、ブランドや健康志向にまかせていいかげんに作ろうとも、消費者はそれらの差を理解しないため、市場では両者が等価になる。そうすると、技術を投入するほど利益率の点で不利になるため、技術の高い業者から順に市場から撤退してゆく。そして市場には粗悪なものだけが残るのである。

 天然の塩を取ってくるのは簡単である。何か自然めいた地名の冠された海に出向き、海水をすくってきて乾かせばよい。筆者にもできる。
 それに比べて、99%純粋なNaClを工業的に作ることは難しい。海から単に取ってきた塩が、あらゆる料理に対して、人間の味覚に合致するような成分を持っているはずもないが、人々は「天然」と書いてあるだけで喜ぶのである。
 工業的に「天然塩」とまったく同じ成分を持つ塩を作り出すことも可能だろうが、そのような技術の投入は、上記の蒙昧な理由によって無意味になってしまうのだ。

 遺伝子組み換えを含むあらゆる化学と技術とを組み合わせて、人類がこれまで経験したこともない最高の食材を研究して作り出すことは、不可能ではないはずだ。だがそれはなされない。「素材の味」という粗野で野蛮なものがもてはやされるからだ。
 料理界の大部分も、この傾向には満足しているようである。だから、「お客の満足が一番」と下品なセリフを吐く割に、客ごとに若干異なるはずの「好みの塩分量」を調整をさせるために、卓上に塩を設置しておくという最低限のサービスさえ忘れるのである。

化学調味料
遺伝子組み換え

  • だから、広告w(同じネタで二回も笑ってしまったじゃないかw) とりあえず、広告から一つ名言らしきものが「こだわりの〜」 -- M 2006-06-01 (木) 01:40:39
  • 流石アドセンス・・・ -- あ 2006-08-01 (火) 00:47:36
  • ここまで読んだよ 2009-10-29 (木) 14:40:45
    >>工業的に「天然塩」とまったく同じ成分を持つ塩を作り出すことも可能
    それは単に化学調味料の混入でしょう
    >>天然の塩を取ってくるのは簡単である
    恒常的にそれをなしえるのは、工業的に99%NaClを得るよりもはるかに難しい
    比較するなら、工場が生産してるのと同じ状況(恒常生産性)を自分にも持ってこないとね
    >>化学と技術とを組み合わせて(中略)最高の食材を研究(中略)それはなされない
    嘘だとまでは言わないが、これを書いた現在においては上記は真実を述べていない
    食材をそのまま液体にする機械(名前や詳細は忘れた)が開発されており、その機械を使って文字通り素材の味を生かしたフランス料理を提供する店が有るようだ
    その機械は、りんごや梨はおろか、アサリ身や鮭の切り身なんかでもできるらしい
    袋に溶かしたい未調理食材だけを入れて密封し中の空気を抜き、加圧処理(加熱はしていないらしい)すると固形物の無い液体(成分は入れた食材100%)ができるという
    >>最低限のサービス
    卓上に塩を置くサービスより必要な最低限のサービスがある
    「こんな俺にとって不味いものを出しやがって、作り直して来い」と言われたら素直に作り直すことである
     
  • かい、 2009-10-30 (金) 02:12:24
    液体窒素などを使ったサイエンス料理というやつが気になる。
    http://tv.mapple.net/www.mapple.net/html/2009_01_18/co_1637960/
     
  • ここまで読んだよ 2009-10-30 (金) 02:43:24
    >>かい
    液体窒素で凍らせた後、それを粉々に砕くことで、食材(主に液体)そのものをパウダー状にしてしまう調理(法)
    たとえば、オレンジジュースを液体窒素に流し込んだ後、取り出して軽く砕くと簡単にオレンジジュースがパウダースノーになる
    こうすることで水分比率なども寸分たがわぬオレンジジュース100%のシャーベットがわずか数秒で、しかも客の目の前で即座に作れる
    (オレンジジュースを普通に冷凍庫で凍らせると、水分が先に凍るため、均等には凍らない)

    そのほかにも、(サイエンス料理のラインナップかどうかはわからないが)
    しゃきしゃき生りんごの切り身と赤ワインをひとつの容器(袋だったかも)に入れ、減圧した後加圧すると、赤ワインがりんごの実の中まで完全に浸透する(でもりんごは「赤ワイン+りんご味」ながら生でしゃきしゃきのまま)とか
     

  • 素材 2012-03-03 (土) 00:34:35
    中国の食材より日本の食材のほうがうまいし安心なので日本のを選ぶ。
    料理において素材は重要すぎる。
    日本の最高級の素材の味を調理によって引き出した料理は最高にうまい。
     
  • ここまで読んだよ 2012-03-08 (木) 02:09:53
    遺伝子組み換えを含むあらゆる化学と技術とを組み合わせて、人類がこれまで経験したこともない最高の食材を研究して作り出すことは、不可能ではないはずだ。だがそれはなされない。「素材の味」という粗野で野蛮なものがもてはやされるからだ。
    >工業的に「天然塩」とまったく同じ成分を持つ塩を作り出すことも可能だろうが、そのような技術の投入は、上記の蒙昧な理由によって無意味になってしまうのだ。
    遺伝子組み換えを含むあらゆる化学と技術とを組み合わせて、人類がこれまで経験したこともない最高の食材を研究して作り出すことは、不可能ではないはずだ。だがそれはなされない。「素材の味」という粗野で野蛮なものがもてはやされるからだ
    未だに修文されていないこれらを改めて読んだがさすがにこれは無いでしょ
    すべて「単に費用対効果が望めないから」であっさり切り返せるし
    これに併せて、費用対効果を弩返しすると言う点において「不可能ではないはずだ」→セロではない
    (いや、まぁこのゼロではないスラ弩返しする酔狂な人物が居ないというのもゼロではないがなwクク……フハハ……ハーッハッハッハ)
    「よいものを投入するべき市場が皆無」であることを隠しながらの論述は、前提を捻じ曲げながらの論述であり、恒真命題ではないかい?
    その恒真命題の核心は「結論と前提が逆転してるようにしか見えない」からでは?
    まぁ、また踊ってみるのも一興かと

    >>素材
    素材の味を引き出すことと安心の因果関係は?
    素材を選ぶことと素材の味を引き出すことの因果関係は?

    余談
    過去に食材をそのまま液体にする機械(未だに詳細は不明)を紹介した際、他スレでスレチと騒がれたことがあった
    この紹介がそもそも「工業的に「天然塩」とまったく同じ成分を持つ塩を作り出すことも可能だろうが、そのような技術の投入は、上記の蒙昧な理由によって無意味になってしまうのだ。」の部分などの強烈な打ち消しになっているにもかかわらずまったく気づかない脊髄反射狐の多さが目立っていた
    (当時それを俺自身が指摘したかどうかは忘れてしまった・後に別掲題で比喩への弱さは指摘したが)
    文面を額面どおりにしか読まない、比喩に対して圧倒的に弱い読者が多いのはこのサイト内外で気になる部分ではある
    大衆が大衆である所以は、この比喩部分の解釈に不具合が生じていて論述の解釈と比喩解釈の混同・誤択を引き起こしているからではないかと、スレチながらに発言してみる
     


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Last-modified: 2012-03-08 (木) 02:09:53 (2325d)