とつげき東北

 自分への愛を確かめるために、又はその旨を相手に宣言させるために、あるいは、嘘であってもその宣言の結果としてある行為を別の行為より優先させるために用いる名言。前文において後ろに行けば行くほど名言的用法に近づくが、前に行けば行くほど思想的蒙昧を意味する。

 例えば、「今日は友達とボーリングに行く約束がある」にもかかわらず、彼女からの突然の誘いがあった場合を考えよう。途中経過についてはどうでもよろしい。結果として出力される名言が「友達と私、どっちが大切なの!」というわけである。

 しかしこうした「比較」は、明らかに不適切である。

(1)原理的には、欲求の「比較」は困難である
 トイレにいきたい行きたさと、食料を食べたい食べたさは異なる。どちらかを禁止されて死ぬとして、その場合に受ける「苦痛」は、主観的には比較可能かもしれないが、その際に脳内・身体等に生ずる不具合は一元化して比較できない。ようするに、「どちらもしたい」というのが当然の結論となる。

(2)比較される2者(またはそれ以上)が、独立ではない可能性がある
 例えば仕事を大切にして安定した収入を得ることは、ひいては彼女を大切にすることにもつながり得るだろうし、友達とうまくやることは、男性のストレス解消等につながり、彼女の幸福に寄与するかもしれぬ。
 万一、本気で「どちらの行為が適切であるか」を判断しようとしているなら、もう少し詳細化して論じる必要がある。

(3)比較されているものが何と何であるかが不明確な場合がある
 その上で主観的な比較を行うとして、「友達との約束を守ること」と、「彼女の要望を聞き入れること」が比較されているなら救いようもある。だが、「友達とボーリングしたい」とか、「あ〜ボーリングやりてぇなぁひさしぶりに」程度の感覚によって、彼女の要望を無視するといった場合も想定できる。このような場合、掲題の名言の発話によって、被発話者がますます「ボーリング>彼女」という自らの意思について自覚的になってしまう可能性がある。

 この種の名言を口にする人こそ、都合に応じて、「比べないで」などと言いがちであることを付記しておこう。


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Last-modified: 2010-08-24 (火) 18:40:16 (2861d)