とつげき東北

 ある論理形式と別の論理形式の論理学上の構造的同一性が明らかになりそうになった際に、深く踏み込むことが自分の不利になると感じて、大衆がとっさに発する言葉。

 よく、「ニートは社会迷惑をかけているからダメだ」といういいかげんな主張を耳にする。「社会」という漠然としたモノがいったい具体的にどの共同体又は共同体成員を指しているか不明だが、「社会迷惑」を論拠にしてしまえば、およそこの世のどんなものも「ダメ」と言えてしまう。緑を増やす運動は花粉を巻き散らかす結果につながり「迷惑」だし、花粉症の人は緑を増やす運動にとって邪魔になり「迷惑」である。乗用車は渋滞の原因となり大気汚染も引き起こし事故で年間何万人も殺すものだからこれほどの「迷惑」も珍しいし、偏差値の高くない人間はおしなべて生産性の低い職業に就く割合が高いくせに社会保険等で税金が投入されるため「迷惑」である。もちろん日本人が生きていることなどとんでもないことで、地球エネルギーの大量消費・人類における富の寡占という最悪の迷惑行為、となる。

 しかし、「それとこれとは別」だろうか――。
「ニートは社会迷惑だからダメ」というだけの主張には、「社会迷惑だからダメ」とみなし得る、上記の種々の「極端な」論理と、どのような観点で「別」なのかがまったく明示されていない。
 筆者の能力では、ある種の<悪意ある分離>をしない限り、ニートの迷惑性と乗用車を愛用する者の迷惑性との間に優劣をつけることはできない。<悪意ある分離>とは、たとえば「車がなくなると食料も供給できないじゃないか。だからメリットもある。だが、ニートには社会的メリットがない」だとかそういったものである。だけれども、「食料供給等の業務に必要な車と乗用車とは別だ」と言われてしまえば、次の<悪意ある分離>をするのに四苦八苦するだろう。実際、「社会的メリット」とやらを生み出さないだろう「ニート的な乗用車」は数多く存在するからだ。筆者にできることは、「乗用車はみんなが利用しているもので、社会的に認められているものだ」などといった、はしたない呟きをすることくらいだろうか、あるいは「迷惑な車も確かに一定数ある。いや、半分以上はそうかもしれない。だが、それはまた別だ」ということか――Co2の大量排出に伴う地球温暖化は世界レベルでの大問題であることを棚に上げ、なおかつ、ニートの中にデイトレーディングやその他活動によって成果を残す人がいることもすっかり忘れて?

「それとこれとは別」という言葉における「それ、これ」なる指示語は、知的な人間にとっては「論理構造」ということになる。だが、平均的な人間にとっては具体的な「話」や「モノ」なのである。つまりたとえば、「ニートの話」と「車の話」は「別の話」なのだ、という驚異的にばかばかしい再確認に過ぎないのだ。
 そうではない、別どころかまったく「同じ」論理構造が存在するということに対して、つまりニートばかりを排撃し個人的嗜好のみを目的とした乗用車利用を行う者を批判しないというこの上なく恣意的で迷惑な欺瞞的差別的立場について、あなたはどのように釈明できるのか、ということを聞いているのだ。
 だがそれに対する「答え」が用意されることはない。その程度のことを考えるということは、既に大衆にとっては荷が重すぎるのである。もとより、「社会的メリット」などといった大層なもの――彼らにとっては本当はどうでも良いものであって単に議論上の論拠として取り上げやすかっただけのもの――について論理的に考える代わりに、ごく矮小で個人的な感情に基づいてニートを貶したために、そういった状態に陥っているのだから。
 掲題語は、「とにかく、今その話をされると、困る」という状況において、「それ(ら)」に対する「これ」を不当に特権化させるための名言なのである。

「今、私は、車の話をしているわけではない――」
 そうだろう、そうだろう。だがわれわれは、もうこんな人物と「ニートの是非」の意見をやりとりして、壮大な時間潰しをしたいわけではない。今、われわれは、彼がいかに愚かしいかについての愉快な話をしているのだ。

具体的事例については→(議論記録4)
その話はしていない

  • M 2007-04-28 (土) 17:49:15
    対語は俺の物は俺の物、お前の物も俺の物。ジャイアンは論理的だなぁ。
     
  • とつげき東北 2007-04-28 (土) 19:30:04
    議論記録2じゃなく4だった…
     
  • oho 2007-04-29 (日) 11:33:18
    こーゆー名言的言説がソフィストのテクみたいに思えてきた。
     

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Last-modified: 2010-08-24 (火) 18:40:14 (2860d)