第六なんでやねん・ダメおかんの話
      

 私の母親は、典型的な「近所のオバチャン」である。失礼だが、教養や科学的知識や判断力というものからは程遠く、そのわりに健康食品やら社会問題やらに対して中途半端な関心と薄い知識を持っているタイプなのである。この手のオバチャンは、どうにも「だまされやすい」という欠点がある。「自分はインテリだ」という妙な自信からか、ヘンに思い込みが強いのである。
 
 昔、我が家に初めて「電気カーペット」が導入された時のことである。電気屋からそれが届き、部屋に敷いた。母は
死ぬほど上機嫌で、鼻歌まで歌い始めている始末である。そして叫んだのである。
 
「うわぁ、やっぱり暖かいわぁ」
 早いわ! まだコンセントさえ挿してへんで! 
 「まだ電源いれてへんで!」と僕が指摘すると、
 「え、ウソや。それでも、
普通の絨毯より暖かいで
 ウソで塗り固めてごまかすな!
 このような母の「思い込み」は、我が家に初めてエアコンが導入されたときにも見られた。
 「うわぁ、さすがエアコン。扇風機と違って涼しいなぁ」
 まだただの送風やっちゅーねん。お前、なんも成長してへんやんけ!
 
 とまあ、この調子だから、当然あやしげな健康器具などにハマってしまうわけである。
 初めのうちは、まだまともだった。例えばぶら下がり健康器。確かに運動にはなるはずである。ただし、おかんは背が低いため、
単にぶら下がることすら許されなかったが。また当然の如く誰も使わず、この器具はたったひとつの健康も生み出すことなく粗大なゴミとなってしまったのである。その様子たるや、まさに粗大であった。
 おかんが次に買ってきたのが、電流を流して健康になるという、二十万円もする奇妙な機械である。なぜこれほど愚昧にだまされるのか不思議でしょうがないが、ともかく私以外の家族はみな、この機械を大変ありがたがっていた。カゼを引いたら電流、体がだるければ電流、果ては、
指を切っても電流である。
 「おかあさん、血がすぐに止まった!」
 「ほらな」
 電流関係あれへんわ!
 「二十万もしたけど、買うて得した」
 大損しとるわ! その程度やったら、ピップエレキバンでこと足りるで!
 
 そしてついに、「健康食品」に達するわけである。黄金パターンである。酢に卵をカラごと入れて、カルシウムが溶けだしてから飲むモノ。「しっかり溶けるまで飲んだらあかんで」……溶けても飲まんわそんなもん! イオンの力で体を活性化させる漢方薬……
イオン別に関係ないわ! イオンのままやったら、体に吸収されへんで! そして「医薬品」でさえないようなオカルチックなモノにまで手を出すのである。
 「とつ、これ飲んでみ。
生命の波動が入った水やで」
 素の水や。
 
 つい最近も、実家からおかんが米を送ってくれたのだが、米と米の間に、
所狭しとそれ系のモノが入っていた。
 米だけ送れや! 生命エネルギーを高める野菜ジュースなんていらんで! 運気がアップするコインも使わんわ! 一円玉より価値低いで!
 
 次はどんなアヤシイ代物をつかまされるのか……恐ろしさの反面、多少好奇心が湧いてしまう今日この頃である。 (完)


          
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